7月31日の概要
7月31日のドル円は大幅下落。
12時ごろに日銀の金融政策決定会合の結果が0.25%引き上げ、国債買い入れ減額に決定と伝わり、一瞬151.600まで下げた後急反転し154円手前まで吹き上げた。
すでに前日のリークから相当織り込んでいたので利益の決済注文が出たのだろう。
その後は植田総裁の会見でタカ派的な姿勢を確認した事からドル円は再び下落。
欧州時間には150円代まで下落し、NY時間にはADP雇用統計が発表され、予想より弱い結果にドル売りで反応し、ついに149円代に突入。
しかしその後はFOMCを控えてのポジション整理の動きがみられて151円代まで戻した。
そしてFOMCでは金利は据え置きと発表、パウエル議長は「「FOMC は利下げに近づいているという感触を得ている」「9 月 FOMC で利下げが選択肢になる可能性ある」と9月利下げの可能性に言及しドル売りへ、最終的には149.619まで値を落とした。
ADP雇用統計
ADP雇用統計が発表された。結果は以下の通り。
前回の値が15.5万人に上方修正され、今回は予想よりも低く前回より減少した12.2万人となった。
詳しく見ると製造業や専門職での雇用が減少し、中小企業にその傾向がみられる。
米国製造業の業績は鈍化しておりサービス業が強い傾向が続いていたので雇用も弱くなってきているのはうなずける。
失業率も上昇してきており雇用市場も縮小の中にあると考えてよいだろう。
最もADPは大した意味を持たないというエコノミストも多く存在し、あくまでデータとして重視するのは8月2日の雇用統計がメインになる。
日銀 0.25%の利上げ
日銀は金利を現在の0-0.1から0.25程度まで引き上げ、国債の買い入れも2.9兆円まで減額する事を決定した。
植田総裁は会見で経済・物価情勢が想定通りに進展しているとし、このまま想定通りに進むなら引き続き利上げを継続すると強気な姿勢を示した。
会見中利上げの経済への影響について問われた植田総裁は「(中立金利に比べて)実質金利は非常に深いマイナスにある」と強調、経済は想定通りに進展しており個人消費は底固く、利上げが強いブレーキになる事は無いと説明した。
また、利上げ水準の壁として0.5%は意識しないと述べ、金利をどの程度で留めるかは「走りながら考える」とした。
総じてタカ派的であり、「現在の金利はかなり低い水準にあるので、実体経済に大きな下振れが無い限りは利上げを継続する」との趣旨と理解され、ドル円は大幅に下落する結果となった。
FOMC 据え置き決定
日銀の発表で大幅に円が上昇した中で迎えたFOMCでは政策金利を据え置きする事に決定し、早ければ9月にも利下げを行うとの姿勢を示した。
会見でパウエル議長は「委員会はより長期にわたって最大限の雇用と2%のインフレを達成することを目指す」「ここ数カ月、委員会が目指す2%のインフレ目標に向けて一定のさらなる進展が見られた」と述べ、今後のインフレ指標でこのところのインフレ鈍化傾向が裏付けられれば「次回の会合で政策金利を変更できるという確信が高まっている」と表明した。
経済については「良いペースで拡大を続けている」と述べインフレ圧力は抑えられつつも堅調だとし、雇用についても失業率は低水準にあると述べた。
さらに声明文ではこれまで「インフレリスクに非常に注意を払う」と対インフレに重点を置いていた表現が「二大責務の双方のリスクに注意を払う」とインフレと雇用の両方に重点を置く表現に変更された。
ここから強すぎるインフレに対しての対策が最優先だったこれまでから少し他に目を向ける余裕の表れを読み取れる。
総じてFRBは利下げに積極的な姿勢で経済も良い傾向にあると考えられ9月の利下げは確定的、年内2回ないしは3回の利下げもありうると市場は判断しドルが売られる結果となった。
テクニカル分析
ドル円の日足では今回の日銀とFRBの決定を受けて大暴落した結果下降トレンドの進行中と言ってもよい形を形成している。上昇トレンドラインブレイク後2度のリトレースを破って大きく下落しているからだ。
しかしここで週足を見てみると執筆時点(8/1)で148.500まで達し、週足の上昇トレンドラインにタッチした。
もしここを破りリトレースも突破して下落するようならば本格的な円高トレンドと考えても良いかもしれない。
逆にここが守られれば直近の下落は大きめのリトレースとして円安トレンドの再開かもしれない。
ファンダメンタルズ的には直近のイベントは総じて円高ドル安を示しているが、日米金利差はまだ5%も開いており、大統領選挙の行方も不透明な中なので、これがトレンド転換になりうるかはこの週足トレンドラインの攻防を見て注意深く判断したい。
コメント